男性バレエ衣装、袖先のシミヌキ
男性バレエ衣装、袖先のシミヌキ(汚れ取り)の実際です。
これは、ドンキホーテの男性衣裳の袖先です。多くの袖先は、このような汚れを抱きます。汗とドーランと、外からは埃が付き、このような状態と成ります。これを落として行きます。

これは、脂を浮かせる前処理を施し、水性ガンで流した姿です。これだけでもだいぶ落ちて来ました。でも、いわゆる変色(酸化した汚れ)は残って居ます。これを、漂白して行きます。

漂白は、酸化漂白という方法です。ご家庭で言えば、ワイドハイター系ですね。この段階でも、完全では有りません。この漂白後も残っている変色は多分、汗から出た「鉄分」だと思います。いわゆる「錆び」です。
錆取りを行った状態です、だいたいこの辺でと思いました。完全に取り切れていない部分は多分、色素沈着という状態です。それを取りに行くと今度は生地が荒れて来ます。
シミヌキは追いすぎないこと、この言葉は最初にシミヌキを教えていただいた先生の言葉でした。
バレエ衣装の襟、取り外してクリーニング
衣装は、様々な所から色が出ます。一ケ所でも色が出ればそれは全体に広がってしまいます。この写真の襟ですが、赤いリボンから色が出るのです。この赤いリボンはなかなか外せない構造で、このまま洗浄することと成りました。

この洗浄の詳細をご紹介出来ないのですが、この赤いリボンを濡らさないで、他の部分を洗浄して行きます。
リボンの裏の部分が、首の周りの部分と成ります、そこを漂白をして行きます。絶対に漂白剤が飛ばないように、細心の注意を払います。
何とか、赤い色が浸潤せずに、全体が綺麗に成りました。

衣装のクリーニングは、例外なく、細かい手作業のクリーニングと成ります。それをご理解いただきたいと存じます。
チュチュの張りを戻したい!!
バレエ衣装で、最も多いのはチュチュですね。このチュチュのクリーニングも一番多いです。そしてそのご要望の中で必ず切望されるのが、チュチュの張り復元です。
何だかダラッとなってしまった、どうしたら元の張りがと、その再生をお願いされます。
これは実は簡単で、何故張りが無くなるのかを考えると分かることなのです。
それは、私達からで出る皮脂と汗が原因なのです、力一杯踊ったチュチュには、沢山の汗と脂が広がって居ます。中でもこの脂が、チュチュの張りを取ってしまうのです。
ですから、張りを戻すには、この脂を取り除いて上げれば良い訳です。私共では、オゾン水を使いチュチュを水洗い致します、これにより匂いが取れて、張りが戻るのです。
ただし、申し訳ありませんが、チュチュの表面がシルク、又は色止めが余り出来ていない生地を使用されている場合には、水洗いが出来ないことが有ります。
この場合は、特殊な洗剤が入ったオゾン水で、チュチュを裏側から拭いて行くのですが、これですと、張りの復元に限界が出てしまうことが有ります。
このような場合は、事前にご相談させていただきます。どうか、ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。
チュチュクリーニングの実際
チュチュを点検・マーキングし、色が出るかを確認した後、色の出ないチュチュは初めに、エリ周り脇の下、胴体の部分、そしてチュチュの内側と、特殊洗剤を使い手作業で汚れを落として行きます。
写真1 汚れている部分を特殊洗剤を付けたスポンジなどでなどできっちりと落として居ます。

写真2 使用している水は「オゾン水」です。

その作業が終わりましたら、チュチュを逆さにして蕾のようにして洗濯袋に入れます(この時出来るだけ中で動かないようにします)。その袋を洗濯機に入れて洗浄します(洗濯機はゆりかごのように動かします)。
写真3 ゆりかご運転している35キロ大型洗濯機

洗いと絞りが終わりましたら、自然乾燥を致します。
これでチュチュに張りが戻ります。

言葉で説明をすると以上なのですが、この工程には私共の経験と学びが凝縮されております、長い経験と、沢山のお叱り、学びの集大成が、洗うことが難しい「衣装達」を蘇らせて参りました。